妹尾病院 相田 安東 安佐南区 広島市 循環器内科・心臓血管外科・内科・外科・消化器内科・リウマチ科・神経内科・リハビリテーション科

血管機能検査

 血管は、内膜・中膜・外膜の3層構造になっています。内膜の内側を覆う一層の内皮細胞は、ひとりの人でテニスコートが数枚分になるといわれています。血管の内皮と中膜は頸動脈エコーにて、その厚みや隆起したコレステロール沈着などを確認することができます。血管の内皮細胞は、生体内最大の内分泌器官で、脳をはじめ血管の恒常性を保つ各種の生理活性物質を産生しています。高血圧症があると、その血管へのストレスによって内皮細胞が障害を受け、炎症を引き起こし血小板や貧食細胞(マクロファージ)が集まり、プラーク(粥腫)を作ります。長期になると、血管壁が肥厚し、弾力性を失い、高血圧は悪化していきます。動脈硬化には、様々な体液をコントロールするホルモンが関与しています。
 弾力性が失われ、中膜にある弾性繊維にほころびが生じて線維が切れた状態となると動脈瘤ができます。動脈瘤は、脳・胸部大動脈・腹部大動脈に多くできます。動脈瘤は遺伝的な要因もあるといわれていますので、家族内に同様の疾患のある方は要注意です。腹部大動脈は、臍のあたりの左右に分かれる部分が最初に多く動脈硬化性変化が出現しますので、CT検査などで心臓の冠動脈や腹部血管の石灰化などを検索するとある程度動脈硬化の進展状態がわかります。また、内臓血管や大動脈の動脈瘤もわかります。
 一方、血管の内膜・中膜が肥厚していけば、血管は狭くなりますので脳梗塞や心筋梗塞、下肢の血管閉塞の原因となります。心臓の血管が狭くなっているかどうかは、CT検査で調べられます。また、下肢の血管は、エコー検査で描出可能です。四肢の静脈もエコーで描出されます。
 血管機能検査は血管の硬さや血管の壁の柔軟性、壁の変化などを調べて動脈硬化の進展について検査する方法です。特に、糖尿病、高血圧症、高脂血症(高LDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症など)などの動脈硬化の促進となる病気をお持ちの方、また家族に心臓病や脳卒中の方がおられる場合は、心臓に限らず脳・末端血管などの血管病のリスクが高くなりますので検査をお勧めします。
 これから動脈硬化がどのように進展するかの指標となるものはまだありません。しかし、現在の血管の動脈硬化の状態や血管の硬さなど血管機能検査である程度の進展具合を評価して、今後の予防をすることは可能です。
 血管病には、動脈瘤や血管の狭窄から発症する心筋梗塞・狭心症・脳梗塞、下肢の血管狭窄による下肢痛、血管閉塞による急性動脈閉塞症などの重傷下肢虚血をきたす閉塞性動脈硬化症などがあります。心臓の血管も、たくさんの場所に狭窄ができると外科的なバイパス手術や内科的な冠動脈ステント留置手術による血行再建術が行われます。しかし、年々か経過するうちに動脈硬化が進展し、血管全体が柳のように細くなっていけばバイパスの血液も流れにくくなり、虚血による重症心不全となります。
 がんと同じ様に血管病で亡くなられる方は、いろいろな治療法・手術法が発達しましたがすべての方がその恩恵を受けているとはいえず、その数は減っていないのが現状です。
これからは、あらかじめ予防することが大切です。
 動脈硬化の起った臓器によって症状の出る場所は違いますが、総じて血管病あるいは脈管疾患として考え、私たちは対処するべきでしょう。
 

血管内皮機能測定記録装置 血管内皮機能測定記録装置